Rustのメモリ管理のしくみとガベージコレクションの違い

先生

Rustのメモリ管理は一見難解だけど、GCなしで安全かつ高速なコードを書くための鍵なんだ!🔑

Rustのメモリ管理:所有権、借用、ライフタイム

Rustは、ガベージコレクション(GC)に頼らず、所有権、借用、ライフタイムという独自のシステムでメモリを管理します。これにより、メモリ安全性を確保しつつ、CやC++と同等のパフォーマンスを実現しています。

このシステムは、コンパイル時にメモリに関する問題を検出し、実行時のオーバーヘッドを最小限に抑えることを目的としています。GCがないため、Rustは組み込みシステムやパフォーマンスが重要なアプリケーションに適しています。

所有権システムは、各値にはそれを所有する変数が1つだけ存在するという原則に基づいています。変数がスコープから外れると、Rustはその値が占有していたメモリを自動的に解放します。


fn main() {
    let s = String::from("hello");  // sが"hello"の所有権を持つ
    // ...
} // ここでsはスコープから外れ、メモリは解放される

所有権とムーブ

所有権のある変数を別の変数に代入すると、所有権がムーブされます。つまり、元の変数は無効になり、新しい変数が所有権を持つことになります。


fn main() {
    let s1 = String::from("hello");
    let s2 = s1;  // s1からs2へ所有権がムーブされる

    // println!("{}", s1);  // エラー! s1はもう有効ではない
    println!("{}", s2);  // これはOK
}

所有権のムーブは、メモリの二重解放を防ぐための重要なメカニズムです。Rustコンパイラは、所有権のルールに違反するコードをコンパイル時に検出します。

借用:参照と可変参照

所有権をムーブせずにデータにアクセスするには、借用を使用します。借用は参照(&)または可変参照(&mut)を通じて行われます。

参照はデータを読み取るためのもので、複数の参照を同時に作成できます。

可変参照はデータを変更するためのもので、同じスコープ内で同時に存在できる可変参照は1つだけです。これにより、データの競合状態を防ぎます。


fn main() {
    let s = String::from("hello");

    let r1 = &s; // 参照
    let r2 = &s; // 参照

    println!("{}", r1);
    println!("{}", r2);

    let mut s2 = String::from("hello");
    let r3 = &mut s2; // 可変参照
    r3.push_str(", world!");
    println!("{}", r3);
    
    // let r4 = &mut s2; // これはエラー。すでに可変参照が存在する
}

ライフタイム:参照の有効期間

ライフタイムは、参照が有効な期間を表します。Rustコンパイラは、ライフタイムを使用して、参照が指すデータよりも長く存在しないことを保証します。

ライフタイム注釈(’a, ‘bなど)は、コンパイラがライフタイムの関係を理解するのに役立ちます。多くの場合、ライフタイムはコンパイラによって自動的に推論されます。


fn longest<'a>(x: &'a str, y: &'a str) -> &'a str {
    if x.len() > y.len() {
        x
    } else {
        y
    }
}
fn main() {
    let string1 = String::from("long string is long");
    let result;
    {
        let string2 = String::from("xyz");
        result = longest(string1.as_str(), string2.as_str());
        println!("The longest string is {}", result);
    }
    // println!("The longest string is {}", result); // string2がスコープから外れているのでコンパイルエラー
}

ガベージコレクション(GC)との違い

GCは、実行時に不要になったメモリを自動的に解放するシステムです。Java、Python、JavaScriptなどの多くの言語で使用されています。

Rustの所有権システムは、コンパイル時にメモリ管理を行うため、GCのような実行時のオーバーヘッドがありません。これにより、より予測可能で高速なパフォーマンスを実現できます。

GCはメモリリークのリスクを軽減しますが、一時停止時間が発生する可能性があります。Rustは、コンパイル時のチェックにより、メモリリークやデータ競合などの問題を未然に防ぎます。

GCを使用する言語では、開発者はメモリ管理についてあまり意識する必要はありませんが、Rustでは、所有権と借用について理解し、適切にコードを記述する必要があります。これにより、より安全で効率的なプログラムを作成できます。

参考リンク

まとめ

Rustのメモリ管理システムは、所有権、借用、ライフタイムという独自の概念に基づいており、ガベージコレクションなしにメモリ安全性を実現します。これにより、パフォーマンスが重要なアプリケーションに適しており、コンパイル時のエラーチェックにより、安全なコードを記述できます。Rustを学ぶことは、メモリ管理の理解を深め、より効率的で安全なプログラミングスキルを身につける上で非常に有益です。